撮影:藤木隆男建築研究所
 
敷地は「港区白金」の古川に近い谷筋に江戸の町の面影を残す一角、100坪ほどの平地で、昭和初期からの既存木造住宅と、それを取り巻く井戸や夏みかんを中心とする、懐かしくも気のおけない『町の中庭』のような場所であった。3世帯数名の家族もまた、さまざまな職能の『東京人』たちであり、それぞれ自立した世界観、都市居住観をもった大人の集団である。
「パティオ」を提案されたのは、実は施主のほうである。それは生まれるべき建築をアプリオリに、しかも過不足なく構想した、場所/時代/人を一挙に直観した住まい手のみが示しうる構想力であった。もちろん「建築の構築」の技術的なリードは私たちに委ねられたが、『住宅を作る』、この施主と建築家、施工者の親密な共同作業と葛藤は、この中庭をめぐり濃密、長期間にわたり繰り広げられ、ようやく終結したのである。
   
所在地 東京都港区白金
敷地面積 332.70m2
延床面積 294.75m2
構造規模 鉄筋コンクリート造 地上3階
施工 アイガー産業
竣工 2006年12月