撮影:北田英治
●掲載誌:『新建築住宅特集』1994年10月号/新建築社、『confort』No.35/建築資料研究社
敷地は秩父の霊峰・両神山を遠望する斜面地である。
私たちの提案した建築は、コンクリート打放しの直方体(アトリエ)と、片流れ/黒塗りの羽目板に白い木製サッシの木造搭状部分(住宅)とが絡み合い、つま先立った複雑な形体をもつ。画家はカトリックキリスト教と禅、神秘主義と抽象性、日本画と洋画の境界を超えた境地にあり、その活動の場の建築的表現を模索したのである。
それは1階に2層吹抜の主空間である鉄筋コンクリート・ワンボックスのアトリエを据え、2〜3階が木造の分節された小スペースを螺旋状に配列した住居部分である。しかし3層にわたるこの建築空間は、常に画家の作品を家中にちりばめたギャラリーという性格をもっており、それがアトリエ/住宅という建築の通常のビルディングタイプを超えた魅力的な内部空間の雰囲気を醸し出しているのである。
   
所在地 埼玉県秩父市
敷地面積 585.84m2
延床面積 273.27m2
構造規模 鉄筋コンクリート造+木造 地上3階
施工 高橋組
竣工 1993年11月