杉並区西荻南の整った住宅地街区に立つ小住宅である。木造/長方形プラン総2階/寄棟。南側全面道路から5m余りセットバックした端正なファサードであるが、東側に隣接する切妻・コンクリート造・2階建て・弊社設計の住宅;『西荻の大和葺き(M・T邸)』*とはご親族同士の関係にある。明確な外形と「打ち放し」の強い表現の隣家住宅建築に対し、優しく控えめなこの小住宅は、それでも唯一ファサードの南面2階外壁を「オープンジョイントのアルミ厚板パネル張り」とすることにより、そのファサードにある種の「都市性/今日性」を発信しようとしている。この住宅はシンメトリカルなプランニングと抑制された表情から、『sonnet』**と名づけられている。
1階の大半はオープンなLDKで、内部意匠は直交する東西軸と南北軸に従う対称性を前提にした空間と設えである。キッチンは住まい手の調理の腕前の確かさと豊かな生活美意識が隅々にいたるまで反映されたもので、家づくりの大半のエネルギーが注がれたものである。
『西荻の大和葺き』から『sonnet』へ、そこには15年の時が流れている。
*『西荻の大和葺き(M・T邸)』;新建築住宅特集2008年1月号掲載
**「sonnet」;小さな歌/14行詩/ヨーロッパ抒情詩
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