敷地は南面11m道路、第2種住居専用地域(一部第1種)の間口44m×奥行30mの矩形である。容積の消化すら困難な敷地条件であったが、どうにか建主の開発条件である全戸南面、おおむね3LDKで26戸(平均規模74.68平米)の計画としてまとまった。すなわち、四周がパブリックで、広大な武蔵野的な面影を残すオープンスペースであり、建物の四面ともよく見通せるロケーションに対し、ごく一般的なマンションに見られる連続バルコニーのステレオタイプな景観を少しでも避けるため、建築の肌理を“タテ縞”、垂直性の強調においた。そのため壁構造で積み上げた住棟を住戸ユニットごとに分節(前後にズラ)した。戸境に外壁から突き出した隔壁、バルコニー内に短冊型の独立壁(空調室外機や洗濯物を隠す)を立て、南面2室のうち1室はバルコニーなしで前面に張り出したタテの羊かん型ヴォリュームとし、タテの方向性を強調した変化のあるファサードを試みたのである。そのことは、反対側開放廊下を“フライングコリドー”状とすることになり、片廊下で面格子なしの二面採光を獲得している。総じて全体に不整形で凸凹の多いワンヴォリュームの集合住宅となった。それは日影規制と階高、配置、そしてコストとのパズルの成果である。 |