撮影:新建築社
●掲載誌:『新建築』2000年8月号/新建築社
●受賞:愛知県人にやさしい街づくり賞特別賞、第9回公共建築賞優秀賞
遠く西に伊吹山を望む濃尾平野ののどかな既成市街地、北側に小学校が隣接する平坦な敷地である。
改築にあたり、たてわり保育、障害児保育、時間外保育などを広く受け入れてきた“仏教的教え”に基づく保育/福祉精神の、更なる課題であり時代の要請でもある高齢者通所施設=ディ・サービスを合築することが企てられた。両施設にとって「接地性」は必須の要件である。高齢者施設と保育園の一部、乳児室と一時保育室、遊戯室を1階に配置、その他の保育諸室を2階とした。1階の屋根には土を盛り「地上化」することにより地面からの遊離を補った。
生命環境がエンドレスな構造をもつとすれば、その一部である建築環境もまたそうあるべきなのかもしれない。この建築は翳や襞、レベル差や肌触りに満ちている。子どもや年寄りにとって豊かな「アフォーダンス」としての建築環境、それは子どもにも年寄りにも媚びず、しかしやさしい営巣=生活空間づくりの試みなのである。
建築が古び、植生が成熟するとき、街の人々が保育園の「子育て支援」に自然に参加し、「在宅と施設の境の無い」高齢者の居場所が整っているのを夢想して見る。すなわち「福祉施設の環境化/環境の福祉施設化」の実現である。
   
所在地 愛知県一宮市
敷地面積 2,461.44m2
延床面積 1,227.56m2
構造規模 RC造 地上2階
施工 矢作建設工業
竣工 1998年6月